参議院予算委員会に、黒羽二重の着流しに身を包んだ剣豪が現れた。知性的な顔立ちと緩やかに波打った銀髪。腰には名刀無想正宗。ご存知、西田議員その人であった。
西田は質問席に立つや相手を睨みつける。無言で投げかける鋭い視線だけで、後ろ暗い菅首相は縮み上がった。既に心臓が早鐘を打っている。手足が振るえ、目がかすむ。
「菅さん!」西田の大声が響くと、菅は椅子の上でぎゃっと飛び上がり、その勢いで失禁した。
「あなたねえ、在日外国人のK氏に献金を返したのなら、領収書を出しなさいよ」いきなりの先制攻撃であった。
よろよろと立ち上がった菅のズボンが濡れている。がに股で歩きにくそうに演題まで辿り着くと、とぼけた調子で尋ねた。「リョ、リョウシュウショ?」ソレ、何の話だと云わんばかりの態度である。
「領収書を早く出しなさい」西田が再度要求する。
菅が答える。「リョウ・シュウショさんなら、今は上海に居られる筈で・・・・」
「ぶぶぶ、ぶわっかもん!!外国人の人名を尋ねているのではないっ!」西田の雷が落ちた。怒り心頭である。「時間の無駄だ。次の質問に行きます。」
「ではお尋ねするが、市民の会にあなたは巨額の献金をしましたね。」
この質問も菅にとっては痛い。出来ることなら答えずに済ませたい。再びよろよろと演題に立つと、とぼけた調子で云う。「シミンノカイ?」
「あなたと親しい市民の会じゃないか。金の流れについて説明してください。」と、西田。
「シー・ミンカイさんなら、たしか平壌で・・・」と、菅。
「ぶぶぶ、ぶわっかもん!!誰が外国人の名を尋ねたっ!ふざけるな!」西田の怒声が飛ぶ。「あなたがた民主党は所詮、外国人の政党なのだ。だから何もかも外国人の名前に聞こえるのだ」菅がすまなそうな顔で頷いた。
「時間の無駄だ。菅さん、もう、あなたはいらん。」西田はこう云うと、海江田を睨みつけた。
「海江田さん!」大声で西田から呼ばれると、大臣はそれだけで泣き出した。肩を震わせ身悶えして、おいおい泣き続ける。質疑が出来ない。西田は舌打ちすると、今度は野田を睨みつけた。
「野田さん!」西田の大声がよほど衝撃を与えたか、大臣が脱糞した。西田の殺気と野田の臭気がぶつかりあう。これも質疑に至らない。
「これじゃやってられん。」こうつぶやくと西田は名刀無想正宗の鞘を払った。「いっそ、売国奴は叩き斬る」
これを聞いた民主党議員たちは悲鳴を上げ、雲の子を散らすように全員が会議室から逃げていった。何を血迷ったか、公明党も何人か慌てて逃げていった。驚いたことに自民党にも逃げた奴がいる。
西田は冷たい眼で逃げ遅れた菅を眺めた。「最早、これまで。あなたとの質疑も最後だ。この剣を拝むがよい。」
そして、こう告げた。
「拙者の円月殺法こそ、菅さんにはお似合いだろう」
西田は刀の切っ先を床すれすれの下段に落とし、上段に向けゆっくりと円を描くように剣を回し始めた。天から地へ。地から天へ。
ぐるり、ぐるり、ぐるり・・・
西田は微動だにしない。剣だけが鈍い光を放ちながら、大きな円を描く。
ぐるり、ぐるり、ぐるり・・・
目の前で回転する剣が菅の感覚を狂わせたのか、徐々に円が大きくなり、自らが吸い込まれそうな錯覚に陥る。死の恐怖がつのる。
ぐるり、ぐるり、ぐるり・・・
「まま、待ってくれっ」ひきつった声で叫んだのは菅だった。「こここ殺さないでくれ」
「馬鹿者っ!」西田が一喝する。「この剣がおのれの姿を映すことになぜ気付かぬか!」
呆然とする菅。何のことかさっぱり分からない。
「何を尋ねようと、あなたの答弁はな」ここで西田はにやりと嗤った。
「堂々巡りなのだ」