食品衛生法により、6月30日を以て牛レバーの生食、いわゆるレバ刺しが禁止された。腸管出血性大腸菌が多く、鮮度とは無関係に重症の食中毒を引き起す頻度が高いと云う。そんな危ない食品を何故今まで野放しにしてきたのか理解に苦しむ。
もっとも従来は法律で禁止する必要がなかったのだろう。レバ刺しなんて非常識なシロモノを、まず一般の人々は食さなかったからだ。この文明社会で、動物の贓物を生で喰うなんて異常な行為だ。肉にせよ臓物にせよ、動物の体には多く有害な菌が棲息する。生は危ないと分りきっているから、原始時代のギャートルズでさえマンモスの肉を炙って食した。
レバ刺しが一般化したのはつい最近のことだ。かっては臭さや煙さや汚らしさで、一般の人々から敬遠された焼肉屋も随分洗練されてきた。家族連れやカップルで利用するケースも増えた。多くの消費者の目に触れる一品になれば、中毒発生の危険性を排除するため、厚生省が提供禁止に踏み切るのは当然だ。よくやったと、厚生省を褒めたい。
巷には何を喰おうと自由だとか、人権侵害だとか息巻いている連中もいるが、馬鹿を云っちゃいけない。食中毒で死亡者でも出れば、政府が悪い!厚生省が悪い!責任者出てこ〜い!謝罪と賠償をしろ!となる。レバ刺し如きでそんな騒ぎを起こすなら、いっそ禁止するほうが合理的だ。
そもそも危険な食材の流通や提供を禁じて、国民生活を守るのは、政府としての役目だ。これは日本に限らない。例えば先月も、アメリカの食品医薬品局FDAが、韓国産貝類を全面禁止にしたが、誰も自由や人権の侵害だなどと馬鹿な反論をする消費者はいない。人糞まみれの海で養殖されノロウイルスに侵された貝類を禁止するのは、当然の措置だと誰もが受け止めている。
ま、それにしても、牛の肝臓を刺身で食すって、一体どういう神経なのか。そんなものはわが国の伝統でもなければ、独自の食文化でもない。四方を囲む海から採れる新鮮な魚介類とは話が全く違う。衛生観念のない、嗜好の偏ったゲテ物好きな連中に、世界に誇るべき日本の食文化を語って欲しくはない。