「崩壊」と云う言葉には大変なインパクトがある。崩れて壊れるとなりゃ、ボロボロでガタガタだ。よろよろと足元もおぼつかない。気を失って、ひっくり返りそうだ。ああ、もう駄目だ。がっくり膝を落として泣けてくるイメージだ。
しかもユーロ崩壊となれば、この世の終わりみたいな感じすら漂う。ついこの間まで、ドルに次ぐ第二の基軸通貨と謳われた、あのユーロだ。遂に歴史と伝統文化のヨーロッパが壊滅するのか。欧州統合の夢は潰えるのか。ああ、もう駄目だ。ここでもう一度、膝を落として涙する。
いやいや、ちょっとお待ちなさい。別に泣くことはないのだ。ユーロがどうなろうと別にこの世の終わりじゃない。加盟国が協力して築き上げた共通通貨だもの、立ち行かなくなれば崩壊と呼ばれてもおかしくはない。でも、ユーロが露と消えても、然したる影響なんぞ有りゃしない。
共通貨幣の流通がはじまって10年、今はユーロが当たり前になったが、ドイツはマルク、フランスはフラン、イタリアはリラとそれぞれ国の旧通貨に戻るだけの話だ。そもそも貨幣流通開始の直前まで、ユーロなんて本当に成り立つのかと誰もが疑心暗鬼だったのだ。
だから、各国の中央銀行には自国の貨幣が大量に備蓄されている。しかもユーロと各国通貨の交換レートは統合前に定められている。例えば1ユーロ=1.95583マルクと決まっている。簡単に元に戻せる。直ぐにしないのは、欧州中央銀行の後始末と決済システムの整備など事務作業の時間を稼ぐためだろう。
今から思えば、それぞれが独立国家でありながら、国家主権たる通貨政策を放棄するなんて発想が無茶だったのだ。ユーロ紙幣やユーロ硬貨を持ってるひとは大事にするといい。いずれコレクターズアイテムとしてお宝になる可能性がある。
【関連する記事】