野田首相はTPPへの交渉参加を表明した。いや、はっきり意思表示はしてないぞ、前向きに協議すると云っただけだと主張する人もあるが、野田の二枚舌に騙されちゃいけない。あれは党内慎重派に配慮して、曖昧な言葉で誤摩化しただけだ。国内向けに嘘をつこうと、国際外交の場で一国のトップが参加表明した事実は揺るがない。
勝手なコトをしやがってと怒り狂っても、もう遅い。対外交渉は内閣の専権事項だから、首相の交渉参加表明自体には何の法的問題もないのだ。独断専行ではないかと云う指摘や、国内の議論を無視するのかと云う不満はあれ、取り敢えず国民は黙っとれと云われればそれまでだ。
許せん!と慎重派や反対派が血相を変えそうな話だが、こればかりは致し方がない。国際条約である以上、最後に批准承認するか否かを決めるのは国会の仕事だ。交渉を経てTPP締結が国益に資すると判断すれば可決する。逆に不利益をもたらす内容なら否決する。
本来なら国民たるもの、ここで日本政府の活躍に期待すべきだろう。ところが残念なことに、野田政権に成果を望む気がおきない。どう見たって、民主党政府に難しい対外交渉を進める能力はない。さらに影響力の大きいTPPを悪用して、日本国民苛めをするのではないかと心配だ。実はそれが理由で、当初はTPP交渉参加に反対してきた。
巷でTPPに対する不安の声を聞く。生活や経済への影響を考えれば当然の国民感情だ。しかし、不安の源が「アメリカの謀略」ってのはおかしな話だ。経済植民地にされるとか、国体を破壊されるとか、食料安保が崩壊するとか、ちょっと極端過ぎる感情論だ。神経症的な恐れにすら見える。
突如、平成の開国と称しTPP参加を唱え出したのは菅だった。協定の内容を隠したり部分的にねじ曲げて伝え、こそこそ嘘をついて国民感情を刺激した上で、交渉参加表明したのは野田だ。こいつら、わざと「反米気運」を盛り上げようとしているのではないのか。
従来、反米左翼思想に凝り固まっていた連中ばかりの民主党政だから、有り得るコトだ。例えば、普天間は県外などと平気な顔で云っていた鳩山の狙いは、ずばり日米離反だった。日米軍事同盟にヒビを入れることが目的の発言だった。
TPPは交渉事だから、最終的に決裂したり、合意しても批准されない可能性もある。でも最初から何が何でも反対ってのはヘンだ。アメリカの謀略だなんて荒唐無稽な話に惑わさちゃいけない。如何にして強力な経済圏を確立するか、如何にして貿易自由化を通じた経済活性化を実現するか、国民として前向きな議論をしたい。今どき、尊王攘夷とか鎖国とかってな話は馬鹿馬鹿しい。