アメリカには自国こそNo.1だと云う強烈な自負がある。最近は随分落ち目だ没落だと云われるが、経済力にせよ軍事力にせよ、他国に比して圧倒的に強い。だから国連で大勢の国々と同列に扱われると屈辱を感じるらしい。総会で投票をする際、なぜアメリカともあろう大国が、聞いたこともないアフリカの小国と同じ1票しか持てないのかと、客観的に考えれば、ま、もっともな不満を口にする。
国連の意思決定プロセスが思い通りにならぬと文句をつけ、拠出金すら滞納するお国柄だから、アメリカ人がAPECを見る目も厳しい。アジア太平洋経済協力などと立派な名前を冠するものの、会議でもなければ協定でもない。経済協力とか自由化促進と云うだけで、具体的には顔を合わせて情報交換するだけではないか。単なるお祭りではないか。アメリカ大統領たる者が有象無象の国々と並んで何をしている。そういう批判がある。
その程度の位置づけゆえ、来る11月のAPECについてもアメリカはちっとも盛り上がらない。話題にもならない。よし、おらが故郷ハワイで開催するのだもの、ど〜んと花火を打ち上げるぞ、と幾らオバマ大統領が張りきっても駄目だ。アジア太平洋地域の20数カ国から首脳陣が集まって、みんなでアロハシャツ着て写真を撮るんだよね、くらいの関心しかない。
にもかかわらず、オバマ政権はAPECを名誉挽回に利用するつもりだ。今こそ外交無能のレッテルを剥がすチャンスだ。TPPに日本を引きずり込み、出来ることならその枠組みをAPECにも絡めて、アメリカ主導の大経済圏をぶち上げたい。アジア太平洋地域で各国の諸制度を共通化して非関税障壁を撤廃し、域内自由貿易を推進して、アメリカこそが盟主だと国の内外に知らしめたい。アメリカの多国籍企業にがんがん儲けさせたい。これこそが次期選挙に向けた格好のアピールになる。大統領本人はそう考えているようだ。
ふと気付けば、東南アジア10ヶ国が集まるASEANで日本は正に主導的な役割を果たしている。日本が中心になってルールや制度や規格を共通化して、統合市場として大きなプレゼンスを示している。支那や韓国がちょっかいを出したため、最近ではASEAN+3などと云うが、実は+1の日本こそが主役だ。ASEANの旗をみろ。何と、日の丸に束になった10カ国の象徴が描かれているじゃないか。コレなんだよ、わがアメリカこそアジア・太平洋でああいう立場であるべきなんだよ。オバマ大統領は膝を叩いて、そう思ったのではないか。
残念ながら、ひとつだけオバマさんは勘違いしているようだ。日本が並外れた経済力を武器にして、ASEANの国々に無理強いしてルールや制度や規格を共通化したわけじゃない。法律や契約でワザを駆使し、弱いものを捻じ伏せて権益追求を図ったわけじゃない。自由貿易協定を振りかざして他国のドアをこじ開けたわけでもない。
わが国とASEAN諸国との緊密な協力関係は歴史に立脚する。日本が尊い聖戦を闘い抜いて、白人の植民地支配からの独立を促した国々ばかりなのだ。アジアの一員として連帯し絆を深め、互いに尊重しつつ共存共栄をはかる。ASEANはまさに「大東亜共栄圏」だ。オバマさんにはそのあたりがわかっていない。