わが国で朝鮮料理あるいは韓国料理がそれなりの地位を得たのは、つい最近のことだ。ひと昔前は、表通りで韓国料理なんて看板を堂々とかける店は見あたらなかった。キムチと呼ぶ朝鮮漬けを出す焼肉屋とかホルモン焼き屋はあったが、あえて韓国料理と呼んではいなかった。朝鮮とか韓国には悪臭とか不潔と云うイメージが根強くあって、飲食業には適さない冠だった。
その韓国料理店が東京をはじめあちらこちらに増えたのは、たぶんドラマや歌謡曲と同様、親韓メディアの働きかけに拠るものだろう。国家イメージの向上を目指して、韓国政府直轄のブランド委員会みたいな組織が広報宣伝に努めているに違いない。キムチが平気で語られるほど一般名詞化したのだから、大したものだ。もっとも在日南北朝鮮人が多く居住するわが国を除けば、まだまだ韓国料理の知名度は極めて低い。
世界中どこだって、それぞれの国の生活様式や地域の風土に適した食材や調理法がある。例えば、リビア料理とかボツワナ料理と聞いても、どんな食事なのか想像もつかないが、きっとそれなりの伝統的スタイルや独特の嗜好があるだろう。韓国料理もその類だ。世界の片隅のローカルな料理でしかない。
だから、李大統領を国賓として迎えたオバマ大統領主催の晩餐会で、韓国料理が出ず日本風な品々が供されたことに韓国側が不満を持ったとすれば、大いなる勘違いと云うしかない。国際社会は韓国料理なんて誰も知らない。世界の主賓をうならせる腕自慢のホワイトハウスのシェフであれば、自国アメリカ料理はもちろん、食文化の最高峰と云われるフランス料理や日本料理、中華料理あたりには精通している筈だ。しかし、朝鮮半島の料理など考え及びもしないだろう。無茶なこと云っちゃいけないのだ。
そもそも、シャンデリア輝くダイニングルームでキムチをてんこ盛りにしたり、もうもうと煙を上げながらニンニク臭い肉片を焼くわけがない。メインディッシュに犬鍋など有り得ない。ホワイトハウスにおける晩餐会の飲み物はアメリカ産ワインと決まっている。幾ら韓国伝統の酒でも、トンスルなど出すわけがない。
李大統領が国賓としてアメリカで厚くもてなされた理由は、米韓FTAと云う屈辱的な不平等条約を大人しく聞き入れたからだ。当然予想される韓国内野党の批准承認反対をねじ伏せるための馬鹿馬鹿しいセレモニーだ。韓国人は晩餐会で出された料理に文句をつけるよりも、国家が丸ごとあっさりアメリカに料理された事実に怒るべきなのだ。