「まだ現れぬか」双眼鏡で遠方を眺めていた東郷平八郎がぼそりとつぶやく。
「もうそろそろじゃろう」乃木希典が懐中時計を確かめる。
坂本龍馬が顔を見せた。「ちっくと出迎えに来たんじゃが」こう云うと、門前の広場をぐるりと眺めた。「いや、それにしても、大変な人出じゃきに」
「憂国の士を迎える以上、礼を尽くさねばなりません」そう語るのは三島由紀夫だ。隣で吉田松陰が頷く。
しばらくして、見張り台の大村益次郎が門の向うを指差した。
「ついに到着されましたぞ」
「来られましたか」阿弥陀如来が微笑んだ。
「賢者がやってきた」釈迦が静かに云う。
「今こそ、神の国の門を開け」キリストが叫んだ。
重々しい金属音を響かせながら、鉄の門がゆっくりと開いた。
中川昭一が花束を持って進み出た。「お待ちしてました」
極楽浄土の住人たちが盛大な拍手で歓迎の意を表した。そして声を揃えた。
「ようこそ、花うさぎさん」
ラベル:花うさぎさん