夫婦漫才と云えば、ミヤコ蝶々・南都雄二や鳳啓介・京唄子が頭に浮かぶ。関西の芸人がそのまま日本中でもてはやされる時代ではなかったが、彼らは全国的な人気者だった。エロガッパと唄子さんから罵られ、でへへと照れてた鳳啓介の姿を思い出すと、今でも笑ってしまう。
他にも人生幸朗・生恵幸子とか、時代が下って宮川大助・花子なんて夫婦漫才もあった。なかでも人生幸朗のナンセンスなボヤキが好きだった。脱力感と目眩すら覚えるようなボケをかましたかと思えば、「責任者出てこ〜い!」のセリフを決めて爆笑を誘った。
いつの時代でも、夫婦漫才と云えば、華やかで芸達者でしっかり者のお母ちゃんと、何となくぽ〜っと、ついでに生きてるようなスケベなお父ちゃんの組み合わせと相場は決まっている。だって、世の中、そういう夫婦が多くって、そうそうそうだよね、と共感を呼ぶからだ。
田中直紀・真紀子もその伝統を踏襲した夫婦漫才だ。芸達者な真紀子さんが毒舌まじりのギャグを連発し、脇で直紀さんが絶妙のタイミングでナンセンスなボケをかます。実にいいコンビだ。ふたり一緒に舞台に上がることは少ないが、新宿末広亭あたりが似合いそうだ。
直紀さんが防衛大臣になった。鳳啓介や人生幸朗が防衛大臣になったようなものでは、明らかにミスキャストだ。笑いを誘うと云うより、周辺の敵国が嗤うだけだ。防衛大臣が夫婦漫才の片割れでいいのか。命や暮らしを守る軍事をここまで疎かにしていいのか。国民はここでしっかり怒るべきだろう。
「責任者、出てこ〜い!」