東京都が米ウオールストリートジャーナル紙に意見広告を出した。早速、あちらこちらを検索したが、広告の本文が見つからない。東京都の公式ホームページにも載っていない。昨日のうちにWSJ紙を購入すればよかったが、もう遅い。と云うことで、産経新聞の記事を頼りに書く。
意見広告は「東京からアメリカの皆様へ」と題し、都の尖閣購入への理解と支持を求める内容だった。そして「支那と対峙するアジア諸国を支持しなければ、アメリカは太平洋のすべてを失いかねない」と述べた。ま、常識的な意見だと思う。但し、WSJ紙の読者に真意が伝わるのかと率直な疑問を感じる。唐突に尖閣と云われても、何のこっちゃと思う人々が多いだろう。
先ず、日本国内で個人が所有する離島を地方自治体が購入したところで、それがどうしたと云う反応が予想される。別に「アメリカの皆様」の理解も支持もいらない。やりたきゃ勝手にやれよ、と思うのが普通の神経だ。仮にカリフォルニア州政府が太平洋の離島を個人から買い上げる旨、日経新聞に意見広告を出したら、日本人読者は勝手にやれよと云う筈だ。
もちろん、覇権主義の支那がアジア諸国と摩擦を起こしているのは誰もが知っている。しかし個人が所有しようと東京都が購入しようと、支那の侵略姿勢がかわるわけじゃない。支那と本気で対峙するなら、誰が所有しようと、島に軍隊(自衛隊)を駐留させて、海軍が周辺海域に固めりゃいいじゃないか。普通はそう考える。
次に「支那と対峙するアジア諸国を支持しなければ」と云う部分、ここはすとんと腑に落ちる。是非支持すべきと賛同するアメリカ人も多いだろう。しかし、「支那との対峙」を軍事的な緊張と捉え、アジア諸国を支援しろと云う意味に取るなら、おいおい先ずお前がしっかり戦えよ、と思うに違いない。
わが国が軍事紛争に巻き込まれた場合、米軍の強力な支援に期待するのは当然だ。そのための日米同盟だ。でもわが国が戦わなければ、アメリカだってトモダチ作戦に踏み切れない。東京都が島を買うので、もし支那が責めてきたら、あとはよろしく頼むね。そんな馬鹿話はハナからアメリカが相手にする筈がない。どこの国だって相手にしない。
「アメリカは太平洋のすべてを失いかねない」、その怖れがあるから、今年も米海軍主導でリムパック(環太平洋合同演習)が実施された。しかも日本や韓国、インドネシア、マレーシア、オーストラリアなどにロシアまで加えた22カ国が参加して、あからさまに支那包囲網の様相を呈している。広大な海域における自由で安全な航行を確保すべく、支那を抑えようと本気を出しているアメリカに対して、尖閣を守ってくれないと太平洋を失うぞ、なんて、ちょっとなあ。
東京都の尖閣諸島購入には賛成だし、個人的に少額ながら寄付もした。石原都知事の愛国的な行動を全面的に支持する。しかしWSJ紙の意見広告ばかりはその趣旨がよくわからない。アメリカ人相手に寄附金を募るのは無理がある。ビジネスのトレンドや株の値動きに関心を持つWSJ紙の読者相手に広告を打つなら、高利回りの尖閣諸島購入債券発売とか尖閣リゾート開発の出資者募集とか、もっと実利に結びつく話にすべきだった。