ギリシャの再選挙はND(新民主主義党)が辛勝した。わが国の報道ではNDを緊縮財政派と伝えるが、ちょっとした意訳だ。米英では彼らをPro-bailout派と呼んでいる。EUの緊急救済案受入れ派と云う意味だ。もちろん緊縮財政策も支援の条件になっているから、救済案受入れ派即ち緊縮財政派でも構わない。しかしNDは連立政権樹立にあたりEUと支援条件を交渉すると早速宣言した。つまり、取り敢えずユーロ圏に留まって借金するけど、緊縮策などの条件を緩和してくれるよう、EUに頼むと云っているわけだ。
一方、僅差で破れた左派急進連合は反緊縮財政派と呼ばれるが、では如何にして国家財政を建て直すか、何ら提言はなかった。にもかかわらず、緊縮財政への反感を煽ったら人気が沸騰して、あわや勝利の目前まで行った。沢山借りたら借りた方が強い、金貸しのEUに好き勝手を云われる筋合いではない、と云ったら大受けした。さあ殺せと開き直れば、離脱されると困るEUが大幅譲歩する筈だと云う、身勝手な主張だった。
つまり勝ったNDも負けた急進左派もユーロを離脱する気はなく、取り敢えずEUから借金する前提で大差はなかった。支払い猶予や緊縮政策の緩和を認めてもらう為、EUと話し合うか、あるいは、あっさり開き直るか、そのだけの違いだった。もちろんEUやIMFや民間の金融機関など貸し手側から見れば、一応話くらいは出来ないと困るし、前者のほうが後者よりずっと安心だ。でも、冷静に考えれば、貸し込んだ金が戻る可能性はないし、そもそもギリシャには借金を返すアテが全然なく、返済する気もなさそうだ。
ギリシャの経済規模は約30兆円で、大阪府と同じくらいのなのに、現状の国家債務は40兆円を超している。さらに今回の選挙結果を得て、EUから10兆円を上回る新規融資を受ける予定にだ。緊縮財政なんて何の解決にもならないし、この金を働かない国民が貪り喰って、無一文になれば、また金を貸せとゴネるのだろう。とんでもない借り手だ。貸し手が気の毒になる。
ギリシャが本気で再建を図るなら、ユーロを離脱して自国通貨で経済運営することこそ解決策だ。もちろんドラクマは暴落するだろうし、国民生活は一時的に貧しくなるが、弱小国が経済成長を果たそうと思えば、通貨安こそを武器にするしかない。ギリシャ国民がそこに気付かないのか、気付かぬフリをしてるのか、このままじゃますます貧しくなるだけだ。いつまでユーロにしがみついてもどうなるもんじゃない。神殿を廃墟にする神経だから、ギリシャは神様にも見放されるのだ。