予想通りの展開で、安倍総理がTPP交渉参加を正式に発表した。わが国の将来を見据えた英断を心から歓迎し、強く支持したい。演説に述べたとおり、自由・民主主義・基本的人権・法の支配など普遍的な価値観を共有する国々とルール作りを進めることは、日本の国益になるだけでなく、世界に繁栄をもたらす。国を問わず公正な自由貿易こそが経済成長の鍵だ。
TPP交渉で果たして国益が守れるのか、と巷には不安の声もあるが、自民党の公約を信じよう。安倍総理訪米時の日米首脳会談で、「聖域なき関税撤廃」なる障壁は除かれた。自民党が国民に約束し、政府に提示した他の5項目の要求もすべて必ず達成される。即ち自動車などの数値目標を入れぬことも、皆保険制度や食の安全を守ることも問題ない。ISDS条項は国益を損ねるものではないし、政府調達や金融サービスが国の特性を踏まえるのも自明の理だ。そもそもTPPは加盟国が共通して利益を得る仕組みだ。域内で奪い合い損得を争う枠組みではない。
もっとも、そうは云っても根強く反対する人達がいる。懸念を持つ皆さんには1冊の本をお奨めしたい。筑波大学名誉教授、中川八洋氏の「TPP反対が国を滅ぼす」(PHP研究所、1575円)だ。副題に「農水省・JA農協を解体せよ!」とあり、マルクス主義的発想で計画経済にいそしむ農水省の破滅的な農政と、わが国最大の金融保険業として農家から生き血を吸うJA農協の問題を浮き彫りにして、日本農業再生の道を示す。
冒頭にこんな書き出しがある。
「『3・11』に発生した大津波被害と”日本経済つぶし”「脱原発」革命に対してはどこ吹く風と、デマゴーグたちのTPP反対論は、2011年の日本列島を、荒れる暴風の金切り声で埋め尽くした。日本国を衰退させ亡国へ誘う、国民不在の逆立ちした奇論・暴論は、巧妙にも、日の丸をかざした”愛国偽装”をしていたため、ハーメルンの笛より甘美で、保守層に属する良識ある国民の理性と判断力を蕩けさせた。」
その続きにTPP反対論の本質がズバリと解き明かされているが、ここには引用しない。実際に書物を手にとり、お読み頂きたいからだ。賛成派も反対派も、TPPを語るなら必読の書と云っていい。愛国心のほとばしる憂国の書であり、きちんとした学説なのに、エンターテイメント性させ感じさせる読み易さだ。比喩や表現が結構、過激で笑えたりもする。
但し、ひと言。TPP反対派の論客、中野剛志センセイの熱狂的なファンや信者は読まないほうがいい。本書で罵詈雑言を浴びせられ、まさに滅多打ちになっている。ここまで論破されたら立ち上がれないだろう。