安倍首相はTPP交渉参加について発表のタイミングを思案中なのだろう。本来なら4日にシンガポールで11カ国の会合が始まる前に参加表明したかったが、農政議員の多い自民党ゆえ、党内のコンセンサス作りに時間をかける事情もよく分かる。と云っても気になるのが、日米首脳会談以降、時間がたつに連れ、ネット上で反対派の抵抗がヒートアップしているコトだ。
反対派にとってここが最後の正念場か、ひたすらTPPは危険だ!と叫ぶ。それにしても、百害あって一利なし、TPPには何の具体的メリットもないと断言するのは如何なものか。反対派の唱えるデメリットだって別に具体性はない。農業、医療、保険制度などがすべて壊滅するなんてデマの類だ。極端に言えば、反米感情が生んだ妄想か、過度な反企業思想だ。
反対派にとって、アメリカのNPO市民団体Public Citizenが作成し、Democary Nowと呼ぶリベラルなインターネットTVが放映した解説番組が貴重な情報らしい。Public Citizenは、かって消費者運動で大手自動車企業をやり込めたラルフネーダー氏が40年前に設立したNPOの草分けで、その主張や解説は、反政府、反企業、反原発、反グローバリズム思想に彩られる。この手の思想がTPPを否定する根拠に成り得るのか、首をかしげたくなる。
TPPのメリットは明らかだ。自由貿易の促進により経済成長が期待できる。輸出ビジネスが拡大できるし、輸入の増加で消費者の選択肢が増える。貿易実務やビザ発給手続きの簡素化は、輸出入や海外進出の追い風だ。輸出が増えれば雇用にプラスだ。併せて海外からの対日投資も雇用を増やす。そして、日本にとって有利な貿易ルールを設定し、国際標準とするチャンスが生まれる。
二国間の経済協定は相互にウインウインの関係が築けるから結ぶ。多国間の経済協定も同じだ。参加国全てにメリットがあるから結ぶのだ。日米はじめ全参加国々が等しくメリットを享受できる体制作りこそが、交渉の肝だ。それぞれの国が優位性のある自国製品を持つ以上、参加国で広い市場を構成し、生産と消費の規模を拡大させれば、みんなが豊かになれるじゃないか。
どうしてTPPのメリットを認めた上で、農業など一部業種がこうむるであろうデメリットを減少する方向で議論が出来ないのか?反対派の人たちが唱える、一方的なTPP否定論がどうしても理解できない。もっとも彼らに云わせれば、こういうTPP賛成論は全く理解できないんだろうけどさ。