日米首脳会談後のTPPに関する共同声明を読んだ。両国に貿易上、敏感な問題が存在することを認め、一方的に全ての関税撤廃が求められるものではないと明記した上で、最終的には交渉を通じて決めようと述べている。ごく常識的な内容だが、日本側の主張をしっかり組み入れた格好だ。安倍首相の交渉力が高く評価されるが、アメリカ側と折衝した外交スタッフ陣が頑張ったのだろう。ついにチームジャパンが動き出したと思うと心強い。
客観的に見て、オバマ大統領にこうした文言を声明に盛り込むメリットはない。多国間で経済協定を目指す以上、各国の敏感な問題をいちいち取り上げていれば、交渉は頓挫する。だから、あえて例外を認めぬとの前提で協議進行中なのに、日本に対してのみ例外を認めれば、他の参加国が不満を抱きかねない。アメリカ国内からも、何故そこまで日本に対して遠慮するのだと文句が出る。それでも妥協したのは、日本重視の方針に他ならない。
全世界の貿易障壁をなくす筈だったWTO体制は、ドーハラウンドが膠着状態で全く機能していない。方や、欧州共同体EUや北米自由貿易協定NAFTAは順調に進展して経済規模を拡大している。そこでAPECも、アジア太平洋自由貿易圏FTAAPの構築を掲げ、TPPはその初めの一歩なのだ。本来ならわが国が音頭を取って進めるべきところ、農業が大きな抵抗勢力だから身動きが取れない。と云っても、大国の日本抜きでは自由貿易圏が有名無実だ。そこで、アメリカが折れる形で日本がTPP交渉に参加し易いようにとお膳立てをしてくれたのだ。有難い話じゃないか。今こそ、アメリカとがっちり手を組んでTPPを推進しよう。
いや、これじゃ安心できない。交渉参加に断固反対してやる、とか、なんて息巻く連中もいるようだが、世界の自由貿易の発展とわが国の国益を考えれば、TPP参加は当然だ。医療保険制度が壊れるとか、外人労働者が流入するとか、嘘っぱちの恐怖説を煽り、ISD条項がどうした、ラチェットがどうしたと重箱の隅をつついて反対論を唱える人達。あるいは日本国家が滅亡すると陰謀論を叫ぶ人達。彼らの殆どが農協や医師会の毒饅頭を喰らったと思えば間違いない。あるいはTPPに反対の声をあげても、恐ろしい日中韓FTAには無言を貫くところから察し、支那圏に日本を捧げる大中華主義者の偽装保守か。
自民党には200名を超えるTPP反対議員がいると聞くが、農家や医師会の票で選出されていれば、その立場も理解できる。しかしTPPは、安倍総理に一任し国益をかけた交渉に臨むようお願いするのが筋だ。いいじゃないか。農家に対する補償や近代化の促進、農産物の輸出支援などをしっかりやれば、議員諸氏への支持は失われない。むしろ選挙地盤の強化に結びつく。TPP交渉参加を積極的に支持して欲しい。