米スプリント買収により世界第3位の通信グループになると、大々的に宣伝するソフトバンク。確かに売上高はチャイナモバイルや、ヴェエライゾンに次ぐ規模になるらしいが、それがどうしたと、突っ込みを入れたくなる。
スプリントは万年赤字企業だ。契約数は5600万件で、いずれも1億件超えのヴェライゾンやAT&Tに比して顧客数が貧弱だ。毎年、数千億円規模の損失を垂れ流し、負債額は1.5兆円を凌ぐ。満足な設備投資も出来ず、いつ倒産するかと囁かれていた。だからこそ、ソフトバンクの買収提案を歓迎したが、身売りしても黒字化する目算はない。
ソフトバンクはLTEの高速回線を武器に市場シェアを拡大すると発表したが、至るところでWiFi接続が可能な全米の環境を考えると、果たして設備投資に見合うだけの効果があるのか疑問だ。このあたりの事情を同社が知らない筈がなく、買収の目的は他にありそうだ。
派手な宣伝とは裏腹に、ソフトバンクが2兆円規模の有利子負債を抱え、自転車操業で遣り繰りしてきたのは有名な話だ。莫大な借金を抱える企業が、既存事業で返済する可能性が見出せなければ、新しい夢のアドバルーンを揚げて、より大きな額を借りるしかない。
そこで登場したのが太陽光発電や、関西電力の乗っ取りや、スプリント買収などの大型案件だ。目的は借金を膨らませることだから、実は何でもよかったのだ。スプリント買収で狙い通り銀行から金を引き出した。メガバンク3行から協調融資を受けた2兆円の殆どはアメリカに消えるが、借金額がでかくなればなるほど、借りた側が強い立場になる。貸した銀行はいい面の皮だ。
さて、本日の産経新聞に、「米S&P、ソフトバンクを二段階引き下げ、スプリント買収で負担増、米国販売も苦戦予想」と云う記事が掲載された。S&Pの判断は当然だ。格付会社ならずとも客観的に見て、今回のスプリント買収劇は同社の信用力を著しく低下させる。BB+でもかなり手加減した点数と思わざるをを得ない。
4兆円もの貸付先の格付けが「投機的水準」に落ちれば、銀行もそうそう甘い顔は出来ない。莫大な宣伝広告費を使ってメディアを手なづけ、「世界第3位」で世間を欺いたつもりの孫氏も頭が痛いだろう。世界的な格付会社たるもの、そう簡単に詐欺には引っ掛からない。