米政府が監視プログラムを使い、国民の情報を秘密裏に収集している。そう告発した元CIA職員が名乗りをあげた。その名はエドワード・スノーデン氏。国家安全保障局(NSA)に出向していた若干29歳の若者だ。当局の謀略を暴いたのは、自らの正義感によるものだと胸を張り、さらにこう続ける。「逃げ隠れするつもりはない」
もっとも本人がこう声明を出したのは香港で、何のことはない、既にアメリカから逃げ出した身だ。「国家機密を暴露した以上、罰せられることは理解している」と大見得を切るが、CIA関係者によると、逮捕するのは困難らしい。この男の背後に、支那政府がついている可能性があるからだ。
そもそも告発のタイミングがヘンだった。支那によるサイバー攻撃が大きな話題になっているアメリカゆえ、オバマ大統領は、7日の米中首脳会談で習近平をとっちめようと手ぐすね引いて待っていた。ところが前日の6日、突如、米政府の極秘プログラム「PRISM」が暴露されたため、アテが外れた。支那側が「お前んトコだってやってるアル」と開き直る材料になったのだ。
サイバー問題に関して、あくまでも両国でルール作りをしようと話しただけだと、大統領補佐官が首脳会談終了後の記者会見で話した通り、アメリカの勢いが大幅に後退してしまった。国内の情報収集はブッシュ政権以来のテロ対策の一環だと弁明に終始するばかりで、むしろ、もうサイバーの話題は忘れて欲しいような様子だ。
ふ〜ん、キンペイめ、やるじゃないか、と思う。トリニダード・トバゴ、コスタリカ、メキシコの公式訪問日程を組んだら、何だ、てめえ、ひとん家の裏庭で何うろちょろしてるんだ、この野郎!とアメリカに呼び止められた感のある習近平だ。押されっ放しの会談になりそうな気配があったし、支那が望んだG2を印象づける演出など何処にもなく、ぱっとしない首脳会談だった。
それでも支那にとって一番のアキレス腱だったサイバー問題は、ひらりとかわした。陰謀説を唱える気はないが、元CIAの兄ちゃんを使って機密プログラムを暴露させ、オバマさんを窮地に追い詰めて、うまいこと、習は逃げきった。いざとなれば悪知恵を働かせて手段を選ばない。実に、やっかいな敵国だ。