2020年10月23日

将軍、決戦を制す

天下分け目の戦い、その火蓋が切られて僅か一刻余り。夜明け前から平野を覆っていた濃霧が薄れるや、自軍が敵軍を圧倒する戦場が眼前に現れた。

土煙の中、旗挿物を翻して、じりじりと前線を押し上げる我が共和軍の勢いを見よ。傷付き倒れ混乱し、武器も馬も軍旗も戦意も失い、ひたすら敗走する敵勢力と好対照を為す。

瓦版が「優勢」と予想した民主軍が驚くほど脆い。陣幕内中央に座り、戦況に目を凝らす都蘭府将軍の頬が緩む。憎きボケ老人め、さぞや慌てふためき、腰を抜かしているだろう。

前線から駆け戻った伝令が、膝をつき吉報を伝える。「お屋形様に申し上げます。梅伝大将がご次男、藩太氏が潰走中、地元の土民に首を刈り取られた由にござりまする」

「さもあろう」将軍は鷹揚に頷く。梅伝藩太なら、唐国や烏克蘭から多額の賄賂を得てきた確証がある。その上、児童への性的暴行も噂される人非人だ。民草から恨まれて当然。

別の伝令が進み出て、声高らかに報告する。「黒い命が何とやらと喚き、放火や略奪を働く輩どもは、我が軍に恐れを為して全員逐電した由にござりまする」

「よかろう」将軍は再び頷く。卑賎な僧兵や暴徒が刀を投げ捨て我先に逃げる姿が、遠目に見える。テニスラケットを投げ捨て最後尾を走るアレは、黒覆面の女子選手か。

参謀が都蘭府将軍に駆け寄り、更なる吉報を伝える。「敵副将が討死致した由にこざりまする。桑港出身で釜羅と申す強者が倒れた以上、加州が我が方の手中に落ちるは必定かと」

「何?デカマラ?敵の副将は然程に己が逸物を誇るのか?」大御所の勘違いに気付いた参謀が慌てて訂正する。「いやいやいや、姓は針酢、名は釜羅。かの武将は女性にござりまする」

「女子でござったか?して、逸物自慢とは面妖な・・・」、腑に落ちぬ表情で首を捻る。「さては今様のLGB何とかであろう。う〜む、コレも乱世ゆえか・・・」

無駄な思案にふけるところに、「お屋形様!」と叫びながら現れたのは辺洲副将だ。普段は静かな武人だが、顔面を朱に染めて興奮の様子が隠せない。将軍が尋ねる。「おお、如何致した?」


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posted by yohkan at 09:03| Comment(52) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする